壊れるほどに愛さないで
「身体冷えると、心臓にも良くないから、ココア飲んで」

美織は、小さく頷くと、こくんと、一口ココアを飲んだ。

「少し……落ち着いた?」

「うん……」

「……美織、さっきの男……誰?心当たりあるの?」

「ないの……ごめ……なさい。友也の事……私っ……」

ついに泣き出した美織の背中を、僕は、そっと摩る。

「美織は、悪くないよ……全部、僕のせいだから。僕が、美織にずっと隠し事してたせいだから……」

「ごめんなさ……ひっく……友也……もしかして、私が、帰宅するの、いつも見てくれてたの?」

「うん、勝手に付き纏うような真似してごめん……美織が心配でたまらなかったから。でも、あんな事をした後に、美野里の写真を美織に見られて、何て説明したらいいかわからなくて……」

美織が、涙を袖で拭うと、僕の瞳をじっと見つめた。もう、これ以上、美織に黙っていることは出来ないだろう。

「友也、あの写真……友也じゃないんだよね?」

「……うん、美野里の部屋にあったんだ、犯人に繋がる何かの手がかりになるかもしれないと思って、ずっと持ってた」

ちゃんと、美織には伝えなければいけない。

そうしないと、ストーカーから、いや、犯人から美織は、守れないから。

「友也、友也と美野里さんの関係って……」

僕は、空気を吸い込んで、一度ゆっくり吐き出してから、美織の目をしっかりと見つめた。

もう嘘は何一つ吐きたくない。

「話すよ。全部。僕と美野里のこと……そして、美織に近づいた理由も……」

美織の瞳が、大きく見開かれる。


「……僕と美野里は、姉弟だったんだ……」


僕が、静かに吐き出した言葉は、ココアの甘い香りに包まれながら、一秒一秒しっかり時を刻むように静かに響き渡った。
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