壊れるほどに愛さないで
ピーーーッっと回していた洗濯機の終了音が聞こえる。
「さてと」
私は、コーヒーを飲み干して立ち上がると、小さなバルコニーに洗濯を干していく。友也のスウェットとワイシャツに混ざって、自分の私服と下着を干し終わると、二人の並んだ洗濯物から本当に結婚してるみたいな錯覚に陥る。
「うーん、いいお天気」
今日は、11月にしては、気温が高そうだ。見上げれば、青空が広がっていて、小さく細かい真っ白な雲が、ところどころ浮かぶ。
「スノードロップみたい……」
降り注ぐ太陽の匂いとスノードロップみたいな雲を見つめながら、ふと、あの男の子を思い出す。
私は手を広げて、瞳を閉じると大きく深呼吸した。
念のためかけておいた、スマホのアラームが小さくリビングから聞こえてくる。
「えっ……」
慌ててリビングの時計を見れば、いつの間にか9時になる。
「大変っ……」
つい、思い出に浸りながら、のんびりしすぎてしまった。病院の予約は10時からだ。書斎の本棚から、友也に言われた通り、私はミステリー小説に手を伸ばす。
「あれ?」
どれにしようか悩んでいるうちに、本棚の1番下の左端に友也にしては、珍しい一冊を見つけた。本棚の1番下は、雑誌や辞典等が主に置いてあり、今までじっくり見たことはなかった。
「ん?……この本……」
他の雑誌や辞典は埃をかぶっているが、これは時々読み返しているのだろうか。埃は被っていない。
「友也も読むんだ、ミステリー以外も」
今まで知らなかった友也一面を知って、なんだか嬉しく思いながら、それを鞄に放り込むと、私は、慌てて病院へと向かった。