壊れるほどに愛さないで
『友也か?』
父親の声を聞くのも、年に数回になってきていた。
「何?」
『友也……いいかげん、家に一度帰ってきたらどうだ?そんな仕事も辞めて、うちを継げばいいだろう?』
「医師免許も取ってないのに、継げるわけないでしょ」
僕は、父親に聞こえるように、大きくため息を吐き出した。
『……お前が勝手に医大を辞めた理由は何だ?あんなに真っ直ぐに……医師を目指していたお前が……』
「またその話?興味が、なくなった、ただそれだけ」
大学病院の院長をしている父には、到底理解できないだろう。
僕の行動も思考も。
美織には、僕が医大を中退したことも、美織の通う病院の院長が、僕の父親だという事も言ってない。
ーーーーそれでも僕は、全てを捨ててでも、美織を愛してる。
美織しか、欲しくないんだ。
「あ、僕、結婚を考えてる女が居るんだ……落ち着いたら紹介する。じゃあ、切るから」
先程、医師に興味がない、とハッキリ言ったのがショックだったのか、押し黙った父との電話を僕は、無理やり切った。
窓の外の真っ白なコスモスが、秋風に揺れる。
まるで、彼女が笑ってるみたいだ。
彼女は、本当にコスモスが好きだったから。