壊れるほどに愛さないで
大学病院は、平日にも関わらず、多くの患者達で混雑している。

「ふぅ……」

予約していても、時間通りに見てもらえることは少ないが、今日の待ち時間は、特別長いかもしれない。

私が、友也の本棚から借りてきたのは、数年前に流行った、純愛小説だった。

病に侵された女の子が、ずっと好きだった恋人に、来世は、ずっと一緒に居ようねと約束してから天国へと旅立ってしまう、切ない純愛をテーマにした小説で、映画化もされていた。

手元の時計は、予約時間から、すでに1時間以上も経っている。

(こりゃ、読み終わっちゃいそうだな) 

小さなため息と共に、後半に差し掛かったページを捲ると、ハラリと紙切れが落ちて、慌てて拾い上げる。

「え?」

思わず声が出た。

栞か何かだと思ったのは、写真だった。

そして、その写真に写っているのは、ほんの一瞬、自分かと思った。大学時代、私もずっと黒髪だったから。

写真には、コスモス畑をバックに、長い黒髪の黒い瞳の綺麗な女の人が写っている。歳も背格好も私と同じ位だ。こちらを向いて、カメラ目線で微笑む彼女は、同じ性別の私でもドキンとする、素敵な笑顔だ。

「元カノ?……」
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