壊れるほどに愛さないで
ううん、妊娠してもしていなくても、雪斗の側には、もう居られない。美野里さんの心臓を、命を奪った私は、雪斗の側にいる資格なんてない。

それに、雪斗の私への想いは、初恋だからじゃない。美野里さんの心臓が、雪斗を呼んだんだ。それに引き寄せられるように、雪斗が、私に美野里さんを重ねただけ。

『美織の心臓を頂戴』

二人で重なった夜、雪斗は、美野里さんを想って、この言葉を吐いたじゃないだろうか。きっと、雪斗は、自分で思っている以上に、未だに美野里さんを愛している。

そして、私の心臓が、美野里さんの心臓だという事を雪斗は、知らない。

だから、雪斗は、私への想いを、初恋だからと運命のように感じて、まるで真実の愛であるかのように錯覚しているんじゃないだろうか。
 
「ひっく……ふ……」

いつ涙は、枯れるんだろう。
どんなに泣いたって、過去は、変わらない。
変えられない。

ーーーー私の心臓は、永遠に美野里さんのものだ。

「美織……大丈夫だよ」

友也が、震えながら俯いて涙を落とす私を、コワレモノを扱うように、そっと抱きしめた。

「友也……苦しいの……」

「僕が、ずっと、側にいる。美織が、笑顔になれるように、幸せだと思えるように、一生大切にするから」

「友也っ……」

どうしようなく、痛む想いを抱えたまま、私の心は、氷のように冷え固まったまま、壊れそうな音を立てた。
< 240 / 301 >

この作品をシェア

pagetop