壊れるほどに愛さないで
「美織、詳しく話して」

「うん……親同士の再婚だけど、ごく一部の方しか、知らなかったらしくて……友也は、病院で……美野里さんに似た私をみて、一目惚れしたって……」

ーーーーそれは違う。

俺は、唇を噛んだ。

橘友也は、美野里の心臓が移植されたのが、美織だと知ったから、近づいたんだ。医大を辞めてまで。つまり、橘友也は、義姉の美野里に対して特別な感情を抱いていた、ということじゃないだろうか?

それじゃあ、橘友也の美織への愛情は、表面上だけで、未だに、本当の愛情は、美織の中の美野里に向けているんじゃないだろうか?

「美織、橘友也が、ストーカーじゃないのは、分かった。それにキッカケはどうであれ、美織を、愛してるのは分かる。でも……別れて欲しい。俺のために」

「雪斗……私ね」

もう、美野里の時のような後悔は、したくない。俺は、確かに美野里を愛してた。でも、俺は、現在(いま)を生きてる俺は、ずっと忘れられなかった、初恋の美織を、目の前の美織を愛してる。

「友也とは……別れられない……」

「美織っ」 

「ごめんなさ……ひっく……」

もう言ってしまおうか。
美野里の心臓が、美織に移植されていること。

でも、そのことを俺は、後から知ったし、美野里の心臓のことがなくても、俺は、美織を好きになっていたと自信を持っていえる。

出会った瞬間から、考えるより先に、心は、美織に引き寄せられて、気づけば美織に夢中だった。美野里の心臓を持ってるからじゃない。

運命ーーーーきっと愛する事が、愛してしまう事が、生まれる前から決まっていたから。

そんな風に思ってしまうほどに、もう俺は、美織しか愛せない。
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