壊れるほどに愛さないで
「嫌だ、美織を離さない。今日から、俺、もう絶対美織を一人にしない。必ず送り迎えもする。片時も離れたくないから……午後から、東都病院?診察終わったら迎えにいくからっ」

美織の瞳から、大粒の涙が溢れ出す。

「迷惑かけたくない……一人で……行けるから」

「迷惑だなんて思ってないよ」

美織が、俺の声を確かめるように、こちらを見上げた。俺は、そっと美織を抱き寄せる。

美織の首元に顔を埋めながら、美織の匂いと体温を確認して、ほっとする。美織は、いま、俺の腕の中にちゃんといる。

離さない。離すことなんてできない。そのまま唇を重ねようとした俺から、美織は、拒むように俺から顔を逸らした。

「……雪斗、ダメなの」

「え?」

美織は、俺の胸元を押し返すと、小さく呟いた。

「私ね……妊娠……してるかも知れないの」

「妊……娠?」

「まだ、分からないけど、目眩と吐き気があって……生理かなり遅れてるの……だから、午後から、友也の知り合いのお母さんが、開業してるクリニックに行くつもり……」

俺は、瞬時にあの夜が蘇る。

美織が、橘友也に乱暴された時、美織の身体の様子から妊娠の可能性が、ある事は分かっていた。

ーーーーだから、俺は、美織を抱いたあの夜、避妊をしなかった。

もし、美織が、この先妊娠したら、橘友也の子であっても、俺の子供だと言い切るつもりだったから。

「美織、俺と」

「妊娠してたら……友也との赤ちゃんだから、友也と育てたいの……」

(橘友也との子供……?)

思考が止まる。言葉が出てこない。
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