壊れるほどに愛さないで
「どうぞ」

俺の返事と共に、長身の男が、入ってくる。

俺が、雑にネクタイを緩めると、相手もネクタイを緩めながら、コーヒー片手に、俺の隣に腰かけた。

「雪斗ー、ご祝儀弾めよな」

「恭平、悪いな。打ち合わせって事で時間取らせて。綾瀬さんにも内緒にしてもらってさ」

「いや、雪斗と美織ちゃんの為なら頑張りますよ」

恭平は、軽口を叩きながらも、俺が、今しがた恭平にも転送した、橘友也からのPDFデータを真剣な顔で見つめている。

「……この中に、美野里ちゃん事件の犯人、そして、美織ちゃんをストーカーしてる奴がいるってコトか……」

俺は、同じ大学であり、同じサークルに所属していた、恭平に照合作業を手伝ってもらう為に、橘友也との電話のあと、恭平に電話で全てを話した。

「な、雪斗。警察にもそろそろ話した方が良くないか?」 

「あぁ、橘友也にも、それは伝えたが、なんせ証拠が、なさすぎる……結果的に、美織も拉致されなかったし、今の状況で、警察は、すぐには動いてくれない。だから、俺たちで犯人を見つけ出し、先回りしたい」

「……了解」

「恭平、マジで助かる、ありがとな」

犯人は、恐らく、また美織に接触するはずだ。

それも昨日、失敗している。俺たちが、警察に連絡する事も考えて、時間を開けず、接触してくる可能性が高い。だから、できるだけ早く、照合作業を、終えて犯人の目星をつけたい。

「ばぁか。そんな顔してんじゃねーよ。俺とお前だったら、このくらいの写真、すぐに照合できんだから」

恭平が、拳を突き出した。

「ふっ……懐かしいな」

俺と恭平は、写真を撮りに山に登り、頂上に着くと必ずそうしていたように、互いの拳を合わせてグータッチをした。
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