壊れるほどに愛さないで
今朝、雪斗への想いを断ち切った筈なのに。

断ち切る為に、あんな風に雪斗を突き放して、自分から手を離したくせに。

神様なんて、きっとこの世にはいないんだろう。そうじゃなきゃ、こんな残酷な試練を与えるだろうか。やっと出会えた、忘れられなかった初恋の男が、愛した女性の心臓を私は、その女性の命と引き換えに持っている。

「初恋なんて……実るはずないのにね……」

空から舞い出した氷の粒は、あっという間に、増えて、視界を白く儚く彩っていく。



「貴方って、いつも泣きそうな顔してるわよね?」

その声に振り返れば、淡い赤みがかった茶髪を靡かせた、桃葉が立っている。

「桃葉……さん」

服装も、この間とは打って変わって、ショート丈の白いダウンに、寒色系のロングスカートに黒のブーツを合わせていて、展覧会で会った時とは別人みたいだ。

「何よ?夜勤明けで歩いてたら、偶然貴方を見かけたから。ちょっといい?」

「私も……桃葉さんに聞きたいことがあったので……」

「あっそ、じゃあ此処だと人目につくから、そこの裏の神社まで着いてきて」

私は、小さく頷くと、桃葉から数歩距離をとりながら、神社へと向かった。
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