壊れるほどに愛さないで
「悪いわね、もう少しで着くから」

「あ、はい」

私は、桃葉に後に着いて、大通りから、裏道に入り、神社の長い石段を登っていく。

(こんなところに神社があるなんて)

「小さい神社だけど、合格祈願と、恋愛成就で有名なの」

「そう……なんですね」

本当に小さな神社だ。辺りを見渡すが、樹木が生い茂っているだけで、勿論、誰もいない。ツンと冷たい空気が、頬を通り過ぎて、風に躍らされる樹木の葉の音が、やけに耳につく。

「ね、昨日は、雪斗と一緒に帰らなかったみたいだけど、雪斗とは別れてくれた?」

桃葉は、御神木の杉の木の下で、振り返ると、腕を組みながら、ようやく口を開いた。

「なんで……昨日、雪斗と帰ってないって知ってるんですか?」

ーーーー桃葉は、あの男とグルだ。

という事は昨日、私が、襲われていたのも桃葉は、どこかで見ていたのだろうか?

「え?帰る時に、雪斗が、部長さんと一緒に医師とのアポイントに向かうのを、たまたまエントランスで見たからよ。それが何か?」

桃葉は、怪訝な顔をしている。その表情と態度から、演技には見えない。

ならば、私が昨日、桃葉と手を組んでいる男に襲われた事も知らないのだろうか?

「……いつも、私と雪斗を監視してますよね?私のマンションに手紙を置いたり、ヘリウムガスで声を変えて電話をしてきたり」

私は、あえてそう訊ねた。

「何それ。ふざけてんの?」
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