壊れるほどに愛さないで
「桃葉さん、今ならあなたには、迷惑かけません、警察にも言いません。だから……」

桃葉は、小さく首を振った。

「ごめ……なさい。言えない……」

私は、唇を噛み締める。

何とか桃葉から、情報を聞き出したい。きっと、これが最初で最後のチャンスだ。

桃葉が口を割らないのは、私に全てを話すことで、手を組んでいる男に何をされるか分からないから。そして、私が、彼女の事を警察に言わなくても、もし裏切れば、彼女への報復として、男の口から、あの事が漏れれば彼女は、間違いなく病院を追われるから。

「質問を変えます。桃葉さん……私の心臓の事、どうして知ってるんですか……?」

「え?」

案の定、桃葉の顔が引き攣り、身体は小さく震えている。

「患者のカルテを勝手に盗み見て、さらには、勝手に知り得た個人情報を他人に漏らすのは、守秘義務違反で、立派な犯罪です」

「そ、れは……」

「貴方は、私と初めて会った時、私が婚約者から借りていた恋愛小説に挟まっていた、秋宮美野里さんの写真を見た。そして、雪斗も、同じ恋愛小説に美野里さんの写真を挟んでいたことを知っていた貴方は、2冊の本が同一だと勘違いした」

「2冊の……本?」

(やっぱり……)

桃葉と病院で、ぶつかったあの日、私が落とした恋愛小説から美野里の写真を見た桃葉は、私が雪斗から、あの恋愛小説を借りたと勘違いしたんじゃないだろうか?

「はい。あの小説は雪斗のじゃないんです。でも、私が雪斗の小説を持っていると勘違いした貴方は、私と雪斗が、何らかしらの関係があるんじゃないかと思って調べたんですよね?手っ取り早く、私のカルテを……」

桃葉は、目を泳がせると、震えた掌を抑えるように、胸元へ押し当てた。
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