壊れるほどに愛さないで
「どう……しよう……友也……赤ちゃんが……っ」

ポロポロと涙の雫が、白い布団の上に無数のシミを作っていく。友也が、すぐに私をぎゅっと抱きしめた。

「……美織大丈夫、大丈夫だよ。赤ちゃん大丈夫だから。美織が転がり落ちたとき、お腹を守ってくれたおかげだよ」

「え……赤ちゃん……無事、なの?」

身体を少し離し友也を見上げれば、友也が私を安心させるように、ふっと微笑んだ。

「可愛いね。僕らの赤ちゃん。小さくて……驚いた」

友也は、エコー写真をスーツのジャケットの内ポケットから大事そうにそれを取り出すと私に手渡す。

そこには、レディースクリニックで貰ったエコー写真と同じように、小さな命がちゃんと映っていた。

「良か……った……ひっく……」

「うん、赤ちゃんは元気だから。僕は、今は、美織の方が心配。お腹を庇ったせいで出来た、額の裂傷も結構深かったし、傷残らないといいんだけど」

友也は包帯で巻かれた私の額をそっと撫でると、スラックスのポケットから白い箱を取り出した。

「美織……今渡すのどうかと思ったんだけど、美織が妊娠してたら渡そうと思ってたんだ。貰ってくれる?」

友也が、私に向けている白い箱の中にはダイヤモンドの粒が光る指輪が納められている。

「でも友也……私言わなきゃいけな」

「左手見せて」

友也は私の言葉を遮り左手を取ると、そっと薬指にそれを嵌めた。

「一生大事にするから。美織もお腹の子どもも」

「でもね、友也……お腹の赤ちゃん……友也の子供じゃないかも知れないの……」

絞り出すように言葉を吐き出した私の体を、友也が抱きしめた。
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