壊れるほどに愛さないで
「美織、全身打撲だし、階段から転がり落ちた時に心臓発作も起こしてたみたいだし、しっかりみてもらおうね」
「え?」
(心臓発作……?)
──違う。石段から転がり落ちた時、赤髪の男を見た時の記憶発作のことだ。どうして、その事を友也が知ってるのだろうか?
それに意識を失う直前のあの声……。
「どうかした?」
友也が、心配そうに私を見つめている。
「ねぇ、友也……発作の事……誰から?」
「あ、それはね……」
──コンコン。
「はい、どうぞ」
友也は私からさっと身体を離すと、立ち上がり扉に視線を向けた。
「失礼するよ。あ、美織ちゃん、起きたんだね」
野田医師が白衣を靡かせながら入ってくると、後ろに続いて看護師の三橋も入ってきた。
「あ……」
思わず声が突いて出た。
「どうも」
三橋が長身を折り畳むと、私と友也にお辞儀してみせた。その姿は、いつもと違う。
「えと……私……」
「美織ちゃん、思い出したかな?そうだよ、たまたま、神社の階段で倒れていた美織ちゃんを、非番でジョギング中の三橋君が見つけて、救急車で連れてきてくれたんだよ?覚えてる?」
野田医師が三橋に目配せしながらベッド脇の丸椅子に腰掛け、聴診器を手に持った。
「えと、意識を失う前に……声が聞こえて、三橋さんの声だったのを今、思い出して……」
三橋を見れば、いつもの紺色のスクラブではなく、上下黒のスウェット姿だ。