壊れるほどに愛さないで
「ふぅ……」

私のため息を聞きながら、友也が丸椅子に座りなおすと、すぐに口を開いた。

「美織、あの三橋っていう看護師知ってるの?」

「あ、うん。心臓移植で入院した時の担当看護師さんで、その時お世話になって」

「仲いいの?」

「ん?病院で会ったら世間話するくらいだよ」

友也の顔が僅かに曇った気がした。

「友也?どうかしたの?」

「美織、本当に美織を階段から突き落としたの赤髪の男だった?」

友也の真剣な表情に、心臓の鼓動は早くなる。

「三橋さんの事……疑ってるの?」

「いや、背格好とか……なんか似てたなって」

「でも三橋さんが私を助けて、此処まで運んでくれたんだよね?」

三橋の背格好は、確かに犯人の男と似ている。

「それに三橋さんは、ずっと前から黒髪だし……美野里さんと接点だってないような……」

そもそも犯人の特徴といえば、身長が高く適度に筋肉がついているくらいで、顔が分からないのであれば、雪斗も友也も当てはまる。

「それに美織が、目撃した犯人像と食い違うんだよな。彼は赤髪じゃない」

「あ、友也……あのね」

本当は、雪斗に聞いた方が早いのは重々分かっている。けれど、雪斗を危険な目に合わせたくない。決して友也なら危険な目に合わせてもいいなんて思っていないが、昨晩襲われた時、犯人は雪斗の名前に過剰に反応した。

そして、雪斗の事を『あんな男』と呼び、助けてくれた友也には、特に危害を加えることなく立ち去った事を考えると、犯人は友也から遠い人物、または接点のない人物なのかもしれない。

「どした?」

「友也、私の鞄取ってくれる?」

「ん?いいよ」

私は友也から鞄を受け取ると、レディースクリニックに行く前にコンビニで印刷しておいた、マリア像の写真を鞄から取り出した。

「犯人について調べてほしいことがあるの……美野里さんの大学の写真サークルの27期生についてなんだけど」

「話してくれる?」

私は、友也の顔を見て大きく頷いた。
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