壊れるほどに愛さないで
「……ごめん、美織。やっぱ嘘つけないや」
「え? 友也? 」
こんな僕をひと時でも愛してくれて有難う。
「僕、美織と結婚できない。だから、子供も一緒に育ててあげられない」
僕は迷いを振り切るように一息で言葉を吐き出した。美織は大きな瞳を見開くと、すぐに首を振る。
「友也どうして……?急に……そんな事言うの?私……何かしたかな?ごめんね、友也がそんなふうに思う位、何かしたなら」
「ううん。そうじゃないよ。美織のせいじゃない。僕の気持ちの問題だから……」
「……ごめん、なさい。もしかして、友也が怒ってるの雪斗……のこと?……もう連絡も取ってないし会うつもりもないから……だからね」
美織の綺麗な瞳からは、雪みたいな粒が落下していく。僕の為に僕を想って泣いてくれる美織の涙さえも愛おしいと言ったら、美織はなんて言ってくれるだろう。
「おいで」
僕は美織を抱き寄せると美織の首元に顔を埋めた。美織を抱きしめるのは今日で最後だから。
「友也……」
僕は美織の甘い髪の匂いと美織の華奢な身体を抱きしめながら、その言葉を静かに吐き出した。
「お腹の子供は僕の子じゃないよ」
美織が驚いた顔で、すぐに僕を見上げた。
「え? とも、や?」
僕は精一杯笑ってみせる。美織が早く彼の元へいけるように。
「僕、生まれつき精子が少ないんだ。だから……避妊しなくても普通には子供はできにくい。元医学生の僕からしたら、美織のお腹の子供が僕の子の確率は3%くらいかな。だからおそらく彼の子だよ……」
「そんな……こと……」
「それに、僕さ美織を助けに行った時、刺される瞬間、美織が美野里に見えたんだ。だからさ美織を命懸けで助けた訳でも助けたかった訳でもない。僕はやっぱり、美織の中の美野里を愛してて……それは生涯変わらない。だから……僕と……別れて欲しいんだ」
僕が美織の幸せの為にできること、してあげられることなんてきっとこんなことくらだろう。
美織がこの先僕のことなんかで苦しまないように、彼と幸せになれるように僕から手を離してあげるんだ。