壊れるほどに愛さないで
「僕は、美織の中の美野里に恋してたんだよ。でももうお終い。ちゃんと二回目は美野里を助けることができたから。だから僕のお役目はここまでなんだ。これからは美織は、美織の思うままに生きて欲しい」

「そんなの……嘘。友也はいつだって私だけを見て私だけを愛してくれた……私はそんな友也の想いにこれからもっと応えていきたいの。だからね……そんなこと言わないで、そばに居て……ひっく……」

僕は美織の溢れた涙を救いながら、何度も髪を撫でる。

「自分勝手でごめん……でももう決めたから。それに僕、医学部に入り直してもう一度医者を目指そうと思うんだ。人の命に寄り添う仕事に就きたい」

「友也……私……ひっく」

「泣かないで……あとね、彼とよく話すんだよ。彼は……全部分かってるから」

「え? 雪斗の……こと? 」

僕はそっと美織の頬に触れる。美織のその大きな瞳に僕だけを映してくれていた時間が蘇ってくる。

本当に僕は美織が大好きだ。誰よりも。

「うん、彼は警察の事情聴取の際に美野里の心臓が美織に移植されてる事も聞かされたはずだよ。でもね……美織を好きになってから彼はその事実を知ったんだ。だから……彼はきっと美織を待ってる……美織が彼を忘れられないのと同じように」 

「友也……ひっく……私は……」

「大丈夫だよ。もう自分の心に素直になっていいんだ。僕はもう美織が居なくても大丈夫。だから美織も僕がいなくても大丈夫だよ。美織は今度こそ彼と美野里の分まで二人で幸せになるんだ。そして僕らはまた……来世でも恋しよ」

僕はあの小説の一フレーズを口にする。美野里の大好きだった恋愛小説だ。命の期限の迫ったヒロインが、恋人にそう言って最後に別れのキスをする。

「友也……あの小説読んだ……の?」

「僕だって推理小説以外読むんだよ……美織、最後にキスしていい? 」

もしも神様がいるならば、来世もまた美織に恋したい。そして来世こそは添い遂げたい。

「……友也……ありが……とう」

「僕こそ……ありがとう」 

美織を心が壊れるほど愛してる。
どうしようもない程に。
だから来世もまた必ず見つけるから。

僕達は、窓辺に揺れるパンジーに見守られながら、長く触れるだけのキスをした。

──美織、愛してたよ。
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