壊れるほどに愛さないで
『 雪斗へ
 雪斗とは一度ちゃんと話さないといけないのに臆病でごめんなさい。雪斗に会えば気持ちが揺らぎそうで、どうしても会う選択肢ができなかったの。だから手紙に託します。

私はずっと初恋の男の子が忘れられなかった。雪斗から貰ったスノードロップをキーホルダーにして持ち歩くくらいに。だから雪斗に初めて会った時、心が雪斗を呼ぶような、引き寄せられるようなそんな気がしたの。勝手に運命だなんて言葉がよぎって雪斗に恋したと錯覚してしまった。

でもね本当はそうじゃないって気づいたの。雪斗に惹かれたのは、惹かれてしまったのはきっと私の中の心臓が……美野里さんが呼んだから。美野里さんの雪斗への想いが心臓を通じて私を雪斗に引き合わせてくれたんだと思う。

だからね、雪斗が好きになったのも私じゃない。雪斗はきっと今でも美野里さんを愛してるから。もう雪斗とは一緒に居られない。私は私を愛してくれる友也と子供と三人で幸せになりたい。自分勝手で本当にごめんなさい。
身体に気をつけてね。
              美織  』

俺は読み終わるとすぐにスマホで美織をタップするがコール音だけが繰り返される。

「……違うだろっ。俺が美織に惹かれたのは、好きになったのは初恋だからっ……」

どの位そうしてただろうか。何度も何度も虚しくコール音だけが鳴り響く。俺は美織の声を聞くことを諦めると三度目の電話でようやくスマホを放り投げハンドルに突っ伏した。

「くそっ……何でだよ……」

心臓が苦しくなる。美織に会いたくて、今すぐこの手に抱きしめたくて、心が美織の影を勝手に追い求める。

──プルルルッ

震えたスマホに俺は相手も見ずにスワイプした。

「もしもしっ!」

『……もしもし、僕だけど』

──え……?

俺は戸惑いながらも電話口の声に耳を傾けた。
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