壊れるほどに愛さないで
「ふ……ひっく……」

途端に雪斗に会いたくてたまらなくなる。本当は、雪斗に聞きたかった。ちゃんと私を愛してくれていたのか。私だけをその瞳に映してくれていたのか。

でも臆病で弱い私は聞くのが怖かった。雪斗が私の中の美野里を愛している気がして。美野里だけを見続けて、私の中に美野里を探しているような気がして一緒にいる事をどうしても選べなかった。

「雪斗……好きだよ」

吐き出した言葉も想いも白い吐息と共に冬空が吸い込んでいく。どこにもいけない恋しい気持ちだけが、涙となって頬を伝っていく。


──美織


ふいに小さく聞こえた声に蹲っていた私は、思わず顔を上げた。 

(今の声……そんなはず……)

耳を澄ませれば雪をの上を歩いてくる足音がして、その音は真っ直ぐにこちらに向かってくる。 

「美織」

再度聞こえた、その声に身体はびくんと震えた。それでも私はまだ振り返ることができない。ずっと聞きたかった声なのに、振り返るのが途端にこわくなる。

ザク、ザクと雪を踏み締める足音に背を向けたまま、私の身体は背中から、ふいにあったかくなった。
< 294 / 301 >

この作品をシェア

pagetop