壊れるほどに愛さないで
「雪……斗……」

「やっと見つけた……ずっと、美織に会いたくてたまらなかった」

「離し、て……」

「嫌だ。もう二度と離さない。美織もお腹の子供も……三人で幸せになろう」

雪斗の腕はより強く、私を壊れそうなほどに抱きしめる。

「愛してる……美織を愛してるから」

溢れた涙は、足元に咲き乱れるスノードロップに落ちて弾けていく。

「違う……ひっく……雪斗は、私が……美野里さんにみえてるだけ……」

「いいかげんにしろよ。何回違うって言えば信じてくれる?初恋だから。俺にとって美織は初恋なんだ。それに……俺が美織にあの時言ったこと覚えてる?」

雪斗の声が耳元から聞こえて、背中越しに雪斗の鼓動が響いて、私の鼓動と一つになって音を奏でるように重なっていく。

「俺の名前スノードロップと一緒なんだ。スノードロップの別名は待雪草(まつゆきそう)。待と雪がはいってるだろ?もう一度会えたら……俺のお嫁さんになって。俺、そう言って、あの時も美織にプロポーズしたんだ」

「ひっく……雪斗……」

あの時の雪斗の笑顔と二人だけの約束が鮮やかに蘇る。誰も知らない、二人だけの初恋の約束。

「俺と結婚してよ……初恋は実らないなんて嘘なんだ。だって俺達はこうやって、また出会って、今こんなに近い距離で結ばれてる……美織、もう俺の手をとっていいから……二度と離したりしないから」

私が振り返れば、すぐに雪斗が胸の中へ閉じ込める。もう二度と離れ離れにならないように強く抱きしめられて、心も一緒に縛り付けられる。


「美織を心が壊れるほどに愛してる」


その言葉に、私の瞳から溢れた雫は落ちてスノードロップの花弁に染み込んでいく。壊れそうな心を丸ごと包んでくれるように、もう二度と一人で泣いたりしないように、優しく包み込んで慰めてくれる。

「雪斗……愛してる」

互いを慰めあい、未来への希望だけを抱きながら、雪斗と二人で同じ道をただ歩いていきたい。

──スノードロップの花言葉のように。
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