壊れるほどに愛さないで
お会計を済ませて院内処方箋を貰うと、私は美里にシロップのお薬をすぐに飲ませた。美里は仕事の電話を終えた雪斗が戻ってくるなり、甘えてひっついている。

「美里えらかったな。それに、すぐ治るみたいで良かったな」

「うん、やさしいせんせいだった」

美里は咳止めのシロップを飲ませると気分的にもすこし楽になったようで、さっきよりも随分と顔色も機嫌もいい。雪斗が美里を毛布に(くる)んでおぶると私は薬の入った白いビニール袋をぶら下げながら病院のエントランスを潜り抜けていく。外に出れば、まだ雪がちらついていた。

「お、さむ……美里も美織も大丈夫?」

「私は大丈夫、美里は?平気?」

私は自分の巻いていた白いマフラーを美里に巻きつける。

「まま、ありがと。あったかい」

美里が白い吐息と共にニカっと笑った。そしてエントランスを出て駐車場に向かっていると、美里が病院の花壇を指差した。

「ぱぱ、ままみて。きれいなおはなだよ」

美里の指先をなぞれば、うっすらと積もった雪の中からスノードロップが顔をだしている。

私が微笑むのと雪斗が笑うのが同時だった。

「美里も白いモノすきだよな。あれはスノードロップだよ」

「ん?どろっぷ? ……たべれるの?」

「雪の飴玉みたいだろ。食べられないけど、それは希望に満ちていて心に寄り添ってくれる花なんだ」

「うーん……よくわかんない」

「美里にもいつか分かるよ。誰かを心から愛すること、そして愛されること」

私は、美里にそう言うと雪斗の背中から見えている小さな掌を握りしめながら、スノードロップを眺めた。

「帰ろう、俺たちの家に」

「うんっ、ぱぱ、ままだいすき」

「パパもママも美里が大好きだよ」

寄り添って笑い合いながら、ささやかな幸せと希望だけを抱きしめて歩いていく私達を真っ白なスノードロップが、ただ静かに見つめていた。






2022.1.22 遊野 煌

※写真はフリー素材です。
< 301 / 301 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

返事も溺愛もキスのあとで
遊野煌/著

総文字数/112,403

恋愛(純愛)190ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
舞川雛子(26)は大手お菓子メーカー、三日月製菓コーポレーションの企画戦略室で働いている。 また雛子には2年前から付き合いはじめ、半年前から同棲を始めた、同期で恋人の石垣守(26)がいるのだが、後輩の姫原由羅(24)との浮気が発覚した上、いつのまにか元カノにされていた。 守と由羅から『便利屋雛子』と馬鹿にされ、一人こっそり泣いていた雛子に、企画戦略室の上司である雪瀬鷹哉(29)が『──俺と結婚してくれないか』といきなりプロポーズをしてきた上、同居まで提案してきて──? 鷹哉『宜しくな、俺の雛子』🦅 雛子『俺の……ひぃ、雛子?!!!』🐥 シゴデキで冷徹な上司が見せる素顔は、なぜか想像以上に甘くて……🐥💓🦅 ※表紙も作中使用の画像も全てフリー素材です。 ※執筆期間2026.6.3〜7.20完結です。  ※他サイトさんにて恋愛トレンド1位でした〜良かったら読んで頂けると嬉しいです。
眠れない夜は愛しい雛を抱いて
遊野煌/著

総文字数/5,876

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
鷹哉が雛子にプロポーズして一ヶ月ほど経った、ある金曜日の夜のこと。 接待から家に帰った鷹哉は雛子と日本酒で晩酌することになるが──。 鷹哉「……俺は今、どういう状況なんだ?」 雛子「鷹哉さん、好き」 鷹哉「……っ!」 鷹哉がひたすら悶絶することになる、ある夜のお話です🦅🛏️💕 ※ ⚠️こちらの短編は『返事も溺愛もキスのあとで』本編のネタバレを含みます。(完結後のお話です) ※表紙はフリー素材です。
100回目の恋カレー
遊野煌/著

総文字数/8,656

青春・友情17ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『ねぇ、恋カレーって知ってる?』 ──『ん? 恋カレー?』 『うん。恋カレーを100回たべたら、好きな人が自分のこと好きになっちゃうんだって』 これは好きなアイツに好きだよって言えない、臆病な私の初恋と恋のおまじないの話。 ※表紙はフリー素材です。コンテスト用に既存作を改稿しました。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop