壊れるほどに愛さないで
病院のエントランスから、出てきた美織に声をかけようと、車を降りた時だった。

自動販売機の前で、美織が男と立ち話を始めた。少し遠目だったのと、後ろ姿で男の顔は見えなかったが、美織は、男についていき、男の車に乗って行った。

美織が、ついていく位だ。おそらく会社関係の人なんだろうが、やましい気持ちがないのであれば、僕に話せるはずだ。それに、僕が、しつこく美織に聞いたのは、美織の相手の男と話す表情が、《《ただの》》会社の人と話す感じに見えなかったから。

「何で、僕に嘘()いたの?」

美織は、僕が聞けば、正直に言ってくれると信じていた。それとも、僕が、美織を待っていたことを先に話していれば、良かったのだろうか。


どちらにしてもーーーー美織は、僕に初めて嘘をついた。 

丸3年付き合って、美織は何でも話してくれると信じていた僕は、ショックだった。

だから、無理やり美織を抱いた。自分のモノだと誇示するように。

僕の美織だから。
誰にも美織を渡したくない。
もう、二度と離したくないんだ。

「……美織の心をくれるって約束してくれたよね」  

僕は、風邪をひかないように、真っ白な肌を揺らす美織にスウェットを着せ、二重に毛布をかけると、抱きしめるようにして眠りについた。
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