壊れるほどに愛さないで
その寝顔は、この3年と何も変わらないのに、昨日、私を抱いていた時の友也の顔は、私を何処にも行かせまいと、今にも泣き出しそうな顔にも見えた。

シャワーを浴びたいといっても、どんなに待ってと言っても、無理やり、友也は私を抱いた。

いつもの労わるような、優しいセックスでもなければ、私を見ているようで見ていないような、そんな別人みたいな友也が、正直怖かった。

(……初めて友也に嘘ついたからかな)

友也は、私の反応で、昨日、嘘をついたことを気づいたのかもしれない。

何故と、友也に聞かれても、きっと答えられない。

思考じゃなくて、心が求めるような、忘れてしまってる記憶が、彼を知ってると叫ぶような、そんな気持ちになる。

ーーーー心が呼ぶような……こんな気持ちは初めてだ。

『美織さん』

雪斗の笑った顔と少し高めの声が、勝手に脳内再生されていく。それと同時に、とくん、とくん、と心臓は、音を立てる。発作じゃないのに、呼吸が何故だが苦しくなる。

「どうしちゃったんだろう……」

私は、シャワーを頭から浴びていく。考えることも、思い出すことも、何もかも忘れるように、洗い流していく。

昨日の友也のことも、何故だか目が離せない雪斗のことも。

私は、簡単に朝ごはんを作って、メモ書きを残すと、初めて友也よりも先に家を出た。
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