壊れるほどに愛さないで
ーーーーあれはいつだっただろうか。

まだ、俺が小さかった頃だ。冬の湖のほとりで見知らぬ女の子に出会った。

長いふわふわの黒髪を揺らしながら、雪をあまり見たことないのか、長靴で雪を踏みしめると、何度も振り返り、雪についた自分の足跡を嬉しそうに眺めている。

『おいでよ』

確か俺は、そういって、スノードロップを彼女に見せた。

綺麗だね、とエクボを見せながら笑う顔に、俺は、女の子に対して、初めてドキドキしたのを覚えている。

『なぁ、スノードロップって知ってる?』

きっと、雪を見ただけで嬉しそうにしてた彼女だ、俺は、知らないだろうと思いながら、彼女に訪ねた。

『なぁに、それ、おいしいの?』

案の定返ってきた、可愛い答えに俺は、クスッと笑ったのを覚えている。

それから、数日、彼女とは、毎日湖のほとりで遊んだ。雪の中を頬を染めながら、彼女が真っ白な息を吐き出すたびに、ふんわり舞い上がって、俺の心もふわりと舞い上がりそうになった。


『ねぇ、なまえおしえて』

『わたしはーーーー』

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