壊れるほどに愛さないで
俺は、あの時、教えてもらったはずの彼女の名前が、どうしても思い出せない。

幼すぎたせいだろう。
顔もはっきりとは分からない。
ただ、大きな黒目がちの綺麗な瞳だったことを覚えている。

あの時、俺が、渡したスノードロップは、彼女は、まだ持っているのだろうか。

「……な訳ねぇよな」


ーーーー初恋なんて、実るはずがないのだから。

そう言いながらも、俺は、スマホに手を伸ばし、スマホの中に溢れている、雪の写真をスクロールしていく。いくつかの雪の写真の後に、可愛らしいスノードロップの花が、咲いた写真を俺は、しばらく眺めた。 

「スノードロップ、か……」

スノードロップは、聖書に由来するといわれている。

禁断の実を食べてしまい、エデンの園を追放されたアダムとイヴを慰めるため、降っていた雪を天使が、スノードロップの花に変えた。

子供の頃は、知らなかった。

大学になってから、聞いた話だ。

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