壊れるほどに愛さないで
カーテンの隙間から覗く光に、朝が来たことを知る。隣にいるはずの美織を、抱き寄せようとして、既に隣のシーツが冷たいことに気づく。

慌てて起き上がるが、美織の姿はどこにもない。

当然かも知れない。

あんな風に欲望のままに、乱暴に美織を抱いたのは初めてだったから。

そして、彼女が、僕と顔を合わさずに、朝、出て行ったのは初めてだった。

テーブルには、おにぎりと、目玉焼きとベーコン、サラダが置いてある。その横に、小さなメモが置いてあるのに気づいて、僕は、すぐに拾い上げた。

『会社の歓送迎会があるので、自分の家に帰ります。夜ご飯は、冷凍してあるハンバーグがあるから、チンして食べてね。
               美織 』

ラインで送れば済む話をメモ書きにしたということは、美織は、僕といま、スマホでやりとりしたくないという事なんだろう。

あんなことをしておいて、今日も美織に会いたいと思う僕は、どうしたらいいんだろうか。

正直、美織と早く結婚したい。

本人にも、何度も話はしているが、美織の返事は曖昧だ。

せめて同棲さえできたら、僕の心配も、減るのにと、僕の心の中は、黒ずんだ独占欲だけが、大きく膨らんでいく。


僕は、鍵付きの1番上の引き出しを開けると、
そこから、一通の手紙を取り出した。

見慣れた筆跡でかかれた手紙だ。

僕は、何度か目でなぞると、机の引き出しの写真共に仕舞い、再び鍵をかけた。

「……愛してる」

僕は、彼女にそう言葉にする。

伝わらなくても、いまは触れられなくても。

僕は、彼女を愛してる。
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