壊れるほどに愛さないで
「ごめん、電話中だったね、もう少しでお開きだから、綾瀬さんが、美織さん呼んできてって言われてさ」

「あ、大丈夫、ちょうど話終わって切るとこだったから」

気づけば、また嘘をついている。

私は、まだ何か言いたげな友也の話を遮って、無理やり電話を切った。


ーーーー雪斗の事を知られたくなくて。


「そう?美織さん嘘下手だからな」

雪斗は、ケラケラ笑うと、私が電話をしていた、店先横の自動販売機の前に立ち、胸ポケットから、煙草を取り出した。

「え、雪斗君、煙草吸うの?」

雪斗が、切長の瞳を大きくすると、ふっと笑った。

「そんなにビックリする?日頃は、そんな吸わないんだけど、酒飲むとやっぱ吸いたくなってさ」

雪斗は、慣れた手つきで煙草に火をつけると、夜空に向かって煙を吐き出した。

「お、綺麗だね、満月だし、星もよく見える」

雪斗を真似て、私も夜空を見上げた。藍色の夜空に、散りばめられた小さな星々の光の粒が、色とりどりに輝いて、まあるいお月様は、優しい仄かな光を、地上の私達に届けてくれている。
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