壊れるほどに愛さないで
「雪斗君、星とかお月様も撮るの?」

「あ、写真?」

「うん」

「俺は、植物とか花とかが多いかなー。あれ、美織さん、俺に興味持ってくれてんだ?」

お酒は、強いと話して居たが、雪斗も少しだけ酔って居るのかもしれない。

「えと……」

何て答えたらいいんだろう。

興味がないというのは嘘になる、雪斗が気になるのは、本当だから。

その理由は、わからないけれど。

「かわい」

雪斗は、切長の瞳を細めると、揶揄うように笑った。私は、頬がカッと熱くなって、思わず俯いた。

「あ、怒った?」

雪斗は、ポケットから、簡易の灰皿ケースにタバコを押し込むと、私に目線を合わせるように、長身を折りたたんだ。  

「怒って……ないから」

そう答えるのがやっとだ。雪斗が、側にいるだけで、身体より先に心が、雪斗に向かって、手を伸ばしそうになる。

「美織さん、いい匂いするね」 

互いの呼吸音が、聞こえる程の距離で、雪斗の少し高めの甘い声が、耳元から聞こえてくる。

少しだけ顔をあげれば、お酒と煙草の匂いが鼻を掠めて、雪斗の瞳は、熱を帯びているように見えた。

「……雪斗くん、酔ってるでしょ」

私は、思わず近距離の雪斗の胸を掌で突いた。

「酔ってないよ。ただ……」

雪斗の真面目な顔に、鼓動は、階段を駆け上がっていく。そして、雪斗の大きな掌が私の頬に触れた。

「……知りたい」

そのまま、雪斗の顔が少しずつ近づいてくるのが分かった。気づけば、私は、雪斗のワイシャツの裾を握りしめていた。


ーーーーブーッ、ブーッ。


そして、目を瞑ろうとした時だった。

手に持っていたスマホが、再度震えた。
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