壊れるほどに愛さないで
タクシーに乗って、15分ほどたった頃だった。  

隣からは、長い栗色の髪から、とても甘い匂いがして、俺は、鼓動が少し早くなった。

「おーい、美織?」

恭平の家の前にタクシーが停車し、和が、美織を揺するが、起きる気配はない。

「困ったな、美織起きるかな?」

和が、タクシーを降りると、両手に腰をあてて首を傾げた。

「雪斗、和は今日は、俺ん()泊めるんで」

熱っぽい視線を和に向けながら、恭平が、俺の上着のポケットに三千円を押し込んだ。

美織は、長い睫毛を、ぴたりと閉じたまま、気持ちよさそうに眠っている。

「美織さんの家って、綾瀬さん知ってる?」

「それが、うちに来てもらうことが多くて……美織の家も勿論行ったことあるけど、田中町っていうのと、どんなマンションとかは、わかってるんだけど、マンションの名前や詳しい住所がわからなくて……」

「じゃあ、俺も田中町なんで、とりあえず近くなったら、美織さん、起こして家まで送るよ」

「有難う、少し眠れば美織も、起きると思うんだけど」

「じゃあ、また明日会社で」

 和が、俺に少しだけ顔を近づけると、眉を顰めた。
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