壊れるほどに愛さないで
「美織さん」 

細い華奢な肩をゆっくりと揺らすが、美織は、心地よさそうに眠ったままだ。車窓から眺めれば、そろそろ田中町に近づいている。

「家、田中町のどこ?」

美織の睫毛は、ぴたりと閉じたままだ。

俺は、美織の顔を覗き込むようにして、再度声をかけながら、肩をゆする。 

「美織さん、起きて」

「……んっ……ノー……ロップ」

「え?」

俺は、思わず美織の口元に耳を寄せていた。

勝手に鼓動が早くなっていく。

「……スノー……ドロップ……」

「美織……さん?」

(スノードロップ……)

そのまま美織は、俺の腕の中にポスンと身体を預けると、小さな寝息を立てた。
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