壊れるほどに愛さないで
雪斗の瞳が見られないまま、私は小さく頷いた。

雪斗はどう思ってるんだろう。

恋人が居ながら、雪斗のキスを拒むことなく、電話が鳴らなかったら一線を超えていた私の事を。 

「ごめん、なさい」

「どっちのごめん?」

「え?」

「彼氏がいた事を黙っていたことへのごめんなさいなのか、俺自身へのごめんなさいなのか」

雪斗は、私の頬に手を触れると、真っ直ぐに私を見つめた。

雪斗に聞こえてしまいそうな位に、鼓動は、とくんとくんと跳ねていく。

「……恋人がいること、黙ってて、此処で……その」

「俺に抱かれそうになったこと?」

何て答えていいかわからなくて、うまく言葉が出ない私を見ながら、雪斗は、ふっと笑うと、私の頬から手を離した。

「良かった……俺に対して、ごめんなさいだったら、どうしようかと思った」

悪戯っ子のような顔をした雪斗が、私の手を引いた。

「コーヒー飲まない?」

手を引かれて、いくと、二人掛けの木製テーブルに、白のマグカップが二つ置いてある。

「粉コーヒーだけど」

そう言いながら、雪斗が、お湯を沸かす。

座りかけて、テーブルの端に小説が置いてある事に気づく。友也から借りたものと同じ、恋愛小説だ。
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