壊れるほどに愛さないで
シャワールームから出ると、リビングは、コーヒーのいい香りで包まれていた。

「あの、雪斗君、ワンピース有難う」

貸して貰ったワンピースは、私の身体にピッタリだった。

雪斗の目が、一瞬大きく見開かれる。

「……えっと、サイズ……大丈夫そうで良かった」

元カノの物だと雪斗は話していたが、ワンピースには、クリーニングのタグがついていたままだった。別れた彼女の物を捨てずに置いているなんて、雪斗は、その(ひと)のことが、余程好きだったのかも知れない。

なんとなくそう思うと同時に、ふいに胸はチクンと痛む。本当、私はどうかしている。

「ありがとう、雪斗君のおかげで助かった」

「雪斗でいいから、俺も美織って呼ぶし」

少しだけ頬を染めた雪斗を見ながら、私は、自然と頷いていた。

友也がいるのに。
こんなことダメなのに。

頭ではわかっているのに、雪斗といることが居心地よく感じてしまう。雪斗に名前を呼ばれるだけで、胸が騒がしくなって、目が離せなくなる。
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