壊れるほどに愛さないで
(何だろう……)
雪斗と居ることで感じる、友也への罪悪感からだろうか、それでも、あんな風に誰かからの強い視線を感じたのは初めてかもしれない。
私は、まだ帰ってこない雪斗を気にしながら、誰もいない営業所で、郵便物の仕分けを、していく。
「これは、増川部長で……これは恭平君で……」
郵便物の仕分けは、いつも和と交代でしている。うちの営業所は、営業マンが20人程在籍していて、郵便物の殆どが、当然ながら、営業マン宛だ。
「え……」
一人きりの営業所で、私は、思わず声が出た。
白い封筒に印字されているのは、『葉山美織様』。
裏を見れば、差出人は不明だ。
営業所に、営業マンへの郵便物は、あっても、営業アシスタントに来たことはない。要件は、電話か、パソコンへのメールばかりだ。
すぐに封を切って中身を確認する。一枚の真っ白な便箋に、1行だけ、パソコンで、文字が書かれていた。
ーーーー『昨日どこに泊まったの?』
私は、口元を覆う。心臓が音を激しく立てて、呼吸は、浅く早くなっていく。
どくん。と鼓動が跳ねるたびに、頭の中に、警告音が流れてくる。
ーーーー怖いの。
ーーーー誰かわからないの。
自分の意思とは関係無しに、自分の声が脳に直接響いてくる。
「美織?」
雪斗の声が、扉を開く音と共に聞こえてくるが、私は、振り返れない。
慌てて手紙を仕舞おうとした、私の腕を雪斗が、掴んだ。