エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

『病院にいて、昴がお前のことを大事にしようとしてるってことも分かってきた。腑に落ちないけどな』
「腑に落ちないって……」

 私が言うと兄の明るい笑い声が聞こえる。

『でもなぁ、昴に『兄さん』なんて言われるとゾワゾワして堪らないから、それはやめてくれと言っておいて』
「自分で言えばいいでしょ」
『アイツは俺の言う事なんて聞かない。香澄の言う事なら聞きそうだからな』
「そう? そんなことないと思うけど」

 昴さんは患者さんのためになるなら意見は聞いてくれそうだけど、そうじゃない場面では聞いてくれないと思う。
 でも、好きだって言ってくれたし……もしかして聞いてくれるの? そういうもの?

『ま、またこっちにも顔出せよ』
「うん」

 兄はそう言うと電話を切った。
 私は兄が認めてくれたように感じて、ほっとしていた。
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