離婚旅行 〜俺様脳外科医は契約結婚した妻を囲い込みたい〜

「香澄ちゃんは、どう? 足の調子は?」

 優太先生が私の足を見る。

「ふふ、もう飛び跳ねても全然平気」
「飛び跳ねちゃだめだよ、子どもじゃないんだから」
「本当にするわけないでしょう」

 私が言うと、また二人でくすくす笑う。
 その時「香澄」と呼ぶ耳触りのいい低い声がして、振り向くと昴さんがいた。

「そろそろ来るかと思って迎えにきた。花畑先生も久しぶり」
「昴先生、ご無沙汰しています」
「元気そうでよかった。肥田センター長も花畑先生のこと、腕がよくて信頼できると褒めてた」
「ありがとうございます。おかげで何とかやれています」

 優太先生と話しながら昴さんは微笑む。私はずっと昴さんの顔ばかり眺めていた。
 5日ぶりに顔を見て嬉しくてたまらなかったんだ。

 最近は私が寝ている間に帰ってきて、すぐ出て行ってるみたいだ。
 診療だけじゃなくて、病院の経営のこともあるみたいで以前よりもさらに忙しくしていた。
 
 なのに私は本当はもっと顔を見たいし、話したいなんて思ってしまってて……。
 もう十分幸せなはずなのに、もっとと思う自分の欲深さが嫌になってる。

 そしてそれに気づいているのか、昴さんも無理に付き合ってくれる時がある。
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