離婚旅行 〜俺様脳外科医は契約結婚した妻を囲い込みたい〜

 ふたりの話が落ち着いた時、時計を見るとまだ診察の15分前。
 今日の私は午後一番で診察だけど、今は準備で忙しい時間ではなかったのだろうか。

 リハビリや診察で病院に来ると、昴さんが無理して顔を見せてくれることがあった。

 私は嬉しいんだけど、昴さんには無理させているのがわかるので心が痛む。
 結婚しているから、と義務のように感じて、彼の枷になっていないか心配になっていた。

「まだ診察の予約時間より早いし、無理して顔を見せてくれなくても診察でも顔は見れるし……」
「診察は診察だろ。それに変な虫がついてもな」
「なにそれ」
「おいで」

 そう言って突然手が取られる。
 驚いて手を離そうとするけど、するりと指を這わされ掴まれて、全然手は離れなかった。

「ひゃっ……ちょ、手っ!」
「夫婦なんだからいいだろ」
「なんで今日に限ってそういう意地悪……」

 睨んでしまうけど、やっぱり勝手に顔がほころぶ。
 慌てて後ろを向くと、優太先生に頭を下げた。

「じゃあ、優太先生。また」
「うん、またね」
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