内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「あのお客さんかどうかはわからないけど、というか他にも出品者がたくさんいたわ。フリマサイトでも元値より高額で売られていそう。やな感じ」

「はい。本当に欲しい人の手に届きにくくなるのが私も嫌です」

限定物を転売目的の人には売らないという決まりはない。

仮に森ノ屋書房の上層部がそういう決まりを作ってくれたとしても、友人の分も買いに来たなどと言われたら売らないわけにいかないだろう。

その限定版コミックは即日完売となり、翌日に来店し、買えずにがっかりして帰った中学生の顔を思い出して悲しくなった。

(他人を思いやれる人ばかりがお客さんじゃない。残念だけど……)

そう考えたら、卓也の顔が浮かんだ。

(卓也さんも、思いやりのない人だったんだ)

騙されて、もてあそばれて、捨てられた――その現実の痛みが引かない。

ふと兄の言葉を思い出す。

『お前はまだ世間知らずの未熟者だ。まともな相手なのか、騙されていないか、俺が見定めてやるから一度連れてこい』

(いつまでも子ども扱いしないでと反発してたけど、お兄ちゃんの言う通りだった)

自分は頼りない存在なのだと認めれば、兄に会いたくなる。
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