愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました

【番外編】今夜、君の隣に眠る 紘人Side

「それにしても、まさか愛理ちゃんがKMシステムズの社長の娘だったなんてなぁ」

 しみじみと呟きながらワインの入ったグラスを傾けるのは、佐竹信二さん。実家は情報処理サービス業をメインとする株式会社ネクタリイを経営していて、いわば御曹司だ。

 しかし彼は次男というのもあり、自分でRADソリューションという会社を興して、その際に俺に声をかけてくれた。つまり俺にとっての恩人となる。

 今日はKMシステムズにRADソリューションの代表取締役として商談にわざわざ赴いてもらったのだが、それは建前でどうやら俺に会いに来たというのが本当のところらしい。

 つくづくこの人にはずっと心配と面倒をかけている。

「紘人に愛理ちゃんは必要だと思っていたから、結果的に上手くいってよかったよ」

 嬉しそうに話す信二さんに苦笑する。自分にとって愛理は必要不可欠な存在だった。付き合っているときもそう感じていたのに、彼女を失ってから改めて実感して気づく自分の愚かさを呪ったりもした。

 けれどあの遠回りがあって、別れた原因となった彼女との関係があったからこそ今の幸せがあるのだとも感じる。

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