愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 冗談じゃない。抗議をしても崎本は契約書に書いてある以上、なにを言っても無駄だと言ってきた。

『社長からの伝言です。これからもこの業界でやってきたいと思うなら、下手な考えは起こさないほうがいいですよ。十分な報酬とこのシステムが完成するまでのバックアップはしてきたと思いますから』

 食って掛かりたくなるのをぐっと抑える。なにも後ろ盾のない学生だった俺には引き下がるしかなかった。

 どうして改めて契約書を確認しなかったのか。簡単に相手を信用したのか。

 結局はいいように利用されただけだ。それどころか著作権譲渡に同意の契約書が向こうにある以上、自分が書いたソースコードにもかかわらず、改変や流用もできない。自分を責めて、KMシステムズを恨んだ。

『社長からの伝言です』

 柏木清志――KMシステムズの社長だ。こんなやり方、許されるわけがない。いつか必ず復讐してみせる。

 人間不信と自暴自棄に陥った俺は、それだけを原動力に歩き出した。そんな俺を見ていられなかったからか能力を買ってくれていたからか、信二さんに声をかけられRADソリューションの立ち上げに関わった。

 KMシステムズの一件で会社に対する不信感が拭えなかったので、この申し出は非常にありがたく彼のためにも全力を尽くし、おかげですぐに会社は軌道に乗った。

 愛理と出会ったのはその頃だ。

 大学のとき同じゼミで親しくしていた後輩から連絡があり、その内容が久々に会いたいというもので、よくよく話を聞くとどうやら長年付き合っていた彼女に振られたらしい。その彼女は大学時代からの付き合いで俺も知っている。
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