愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「愛理」

 久しぶりに会う彼女は落ち着いたピンク色のワンピースを身に纏い、髪も丁寧に編み込んでいた。ぐっと大人っぽく綺麗になった印象に胸がざわつく。

「紘、人」

 気がつけば彼女を抱きしめていた。本物だ。ずっと恋い焦がれていた愛理がここにいる。しかし彼女は俺からすぐに離れ目を逸らした。

 そこへ崎本が現れ、社長になれないとわかったからか、ずいぶんと機嫌が悪そうに声をかけてくる。しかし彼と愛理が結婚を考えていた仲だったことに驚きが隠せなかった。

 傲慢な言い方で愛理に結婚の話を取りやめ、さらに彼が愛理と結婚しようとしていた理由に怒りを覚える。呆然と崎本の言葉を受け止めている愛理は、傷ついているのか。

 さらには愛理に一歳にならない子どもがいると聞かされ、衝撃を受けた。彼女は顔を真っ青にしてうつむいている。それが本当だとしたら、子どもの父親は……。

 彼女の口から真実が聞きたい。けれどその前に彼女は深々と俺に対し頭を下げてきた。

「父があなたにしたこと……本当にごめんなさい」

 愛理の声は震えていて、今にも泣き出しそうだった。その姿を見て、とてつもない後悔に襲われる。

 やはり彼女は知ってしまったんだ。俺が悩んで苦しんだ以上に、その前からずっと愛理はひとりで抱え込んでいて、別れを決めたのか。

「結婚しよう」

 すんなりといかないのはわかっている。でも、もう二度と離したくない。子どもがいるなら、愛理と同じくらい大事にしたい。

 愛理は突然だと思ったかもしれないが、俺はずっと言いたかった。愛理と歩ける未来を手に入れられるのなら、なんだってする覚悟はあった。
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