愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
『なら、連絡先を聞いてもいい?』

『……どうしてですか?』

 脈略のない質問に首を傾げる。すると紘人はおかしそうに噴き出した。

『わざわざ理由を聞く? そこはイエスかノーじゃないの?』

 彼の指摘になんだか恥ずかしくなる。とことん自分はこういう異性とのやりとりに慣れていない。

『その……』

『さっきは嫌な言い方をしてごめん。八つ当たりだった』

 なんて返そうか迷っていたら、急に紘人が真剣な面持ちで謝罪してきた。あまりにも突然の態度に目をぱちくりさせる。

『土本さんの考えを否定したかったわけじゃない。傷つけたかったわけでも』

『だ、大丈夫ですよ。私こそ自分の考えを押し付けてしまって……』

 慌てて私もフォローし、お互いに謝り合う。そしてふたりの間には妙な沈黙が流れた。今度は私から先に口を開く。

『あの、せっかくなでの一緒に帰りませんか?』

 送ってほしいとまでは言わない。ただ、もう少し紘人と一緒にいたいと思った。それは彼も同じだったらしい。結局、家まで送ってもらい連絡先を交換した。

 メッセージのやり取りから始まり、ふたりで会うようになった。そして彼から交際を申し込まれて付き合いが始まる。きっとどこにでもいるありふれたカップルだ。

 付き合ってどんどん彼の惹かれて好きになっていく自分に驚く。それと同時に怖かった。彼の気持ちを疑っていたわけじゃない。紘人との未来も憧れ半分で思い描いていた。

 けれど、時折見せる彼の冷たい表情に胸騒ぎが消えなくて、ずっと苦しかった。
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