愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
『五十嵐さんは?』
さっさと切り上げ今度は逆に質問する。すると紘人は虚を衝かれた顔になったあと、わざとらしく目線を逸らし遠くを見た。
『俺もいるよ。今でも絶対に許せない相手がいるんだ』
口角は上がっているのに、目はまったく笑っていない。軽い調子なのに声や雰囲気から彼の強い意思を感じて、私はその迫力にただ圧される。
『そう、なんですか。……いつか相手の人を許すか、折り合いがつけられたらいいですね』
きっと私の言葉は微塵も彼には届いていない。さっと立ち上がりグラスを持って逃げるように紘人から離れた。
結局、同期の彼は新しい彼女を作ってみせると前向きになり、二次会へ行く流れになる。その様子に安堵し、私は同僚たちに断りを入れて先に帰ろうとした。
『土本さん』
最寄り駅の方に足を進めていたら、不意に声をかけられ心臓が跳ね上がった。振り返ると紘人の姿があり、目を見開く。
『俺も帰るからついでに送っていくよ。方向同じだったよね』
彼との会話の中で、家からの最寄り駅が意外と近いことが判明したのだ。けれど妙な気まずさもあって、とっさに断ってしまう。
『あ、いいえ。お気遣いなく。家は駅から近いので送ってもらうほどではないです』
彼に限って下心などないだろうし、おそらく純粋な優しさで言ってくれているのだ。私ではなく違う女性でも彼は同じように申し出たに違いない。
紘人は複雑そうな顔になる。失礼だったかと逡巡していたら彼から口火を切った。
さっさと切り上げ今度は逆に質問する。すると紘人は虚を衝かれた顔になったあと、わざとらしく目線を逸らし遠くを見た。
『俺もいるよ。今でも絶対に許せない相手がいるんだ』
口角は上がっているのに、目はまったく笑っていない。軽い調子なのに声や雰囲気から彼の強い意思を感じて、私はその迫力にただ圧される。
『そう、なんですか。……いつか相手の人を許すか、折り合いがつけられたらいいですね』
きっと私の言葉は微塵も彼には届いていない。さっと立ち上がりグラスを持って逃げるように紘人から離れた。
結局、同期の彼は新しい彼女を作ってみせると前向きになり、二次会へ行く流れになる。その様子に安堵し、私は同僚たちに断りを入れて先に帰ろうとした。
『土本さん』
最寄り駅の方に足を進めていたら、不意に声をかけられ心臓が跳ね上がった。振り返ると紘人の姿があり、目を見開く。
『俺も帰るからついでに送っていくよ。方向同じだったよね』
彼との会話の中で、家からの最寄り駅が意外と近いことが判明したのだ。けれど妙な気まずさもあって、とっさに断ってしまう。
『あ、いいえ。お気遣いなく。家は駅から近いので送ってもらうほどではないです』
彼に限って下心などないだろうし、おそらく純粋な優しさで言ってくれているのだ。私ではなく違う女性でも彼は同じように申し出たに違いない。
紘人は複雑そうな顔になる。失礼だったかと逡巡していたら彼から口火を切った。