愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 汗ばんだ肌から逃げるように熱は発散し、密着した素肌同士の触れ合いはこのうえなく心地いい。

 先ほどまで寒く感じていたのが嘘みたいに、今はエアコンで冷やされた空気がちょうどよく感じる。『一緒にいてほしい』と私から言ったとはいえ、ここまで容赦なく愛されるとは思ってもみなかった。

 背後から紘人に抱きしめられる体勢で、息を吐く。私の髪を撫でていた大きな手は、今は力なくベッドの上に投げ出され、背後から聞こえる彼の規則正しい寝息に眠ったのだと安堵する。

 逆に中途半端に寝てしまった私には、まったく睡魔は訪れず目も頭も冴えていた。

 部屋の中に視線を飛ばしていると、パソコンの画面がぱっと明るくなり、煌々と辺りを照らす。さっきまで紘人が触っていたものだ。おそらくそのままかスリープモードにでもしていたのか。

 ほうっておこうとも思ったが、気になりだすと止まらない。下手にさわるのもどうかと思ったが、この場合不可抗力だ。

 紘人を起こさないように彼の腕からそっと抜け出し、ベッドの端にあるパジャマを羽織って彼のパソコンへ近づいた。せめてもう一度スリープモードにしようと画面を見たとき、よく見知った単語が目の前に飛び込んできた。

【株式会社KMシステムズ】

 父の会社の名前だ。どうして紘人が、と思った次の瞬間、血の気が一気に引く。

『さすがにひどすぎるよな。社長に直談判したが取り合ってもらえず、当時学生だったのもあってどうにもできなかったらしい』

 まさか紘人に対してひどい仕打ちをしたのは……。彼が許せないという人間は……。

 嫌な汗が背中にどっと噴き出し、心臓が早鐘を打ち始める。不安と緊張で口の中が一気に乾いていった。

 これは、なにかの間違いだ。見間違いだ。
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