愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
 そう思って、改めて紘人がまとめたであろう資料には、株式会社KMシステムズの役員や内情、数年前からの業績に社長である父のことなどが事細かく書かれている。

 頭の中が真っ白になり、私はパソコンから離れて口元を押さえた。震えが止まらずその場にへたり込む。

 父なの? 父が紘人を裏切ったの?

 信じられない思いと現実として受け入れないとならない気持ちが揺れ動き、涙が出そうになる。息が上手く吐けず過呼吸を起こしそうだ。

 その場から動けずぼうっとする。とにかく紘人の前ではなにも知らないふりをしないと。彼の寝顔をちらりの横目で見て、ふと別の考えが浮かぶ。

 そもそも紘人は、私と父との関係を知らないのだろうか。知っていて付き合おうと言った?

 その可能性をすぐに打ち消す。私たちが出会ったのは偶然だし、付き合っている今の今まで、紘人が私を欺いているような感じはしなかった。

 彼がまとめたであろうこのデータにも私のことはおろか社長の娘の存在さえ記されていない。父とは苗字も違うし、両親が離婚している話はしたが、仕事がなにかまでは言っていなかった。

 なにより私の正体を知っていたら、こんなふうに無防備にデータをおいていたりしないだろう。彼の疑惑が晴れホッとしたのも束の間、逆に今度は怖くなった。

 紘人がいつか、私が株式会社KMシステムズの社長の娘と知ったら? 許せない相手の娘と知って彼はどう思うの? 私たちの関係が変わらないままでいられる? そんな都合のいい話、あるわけがない。

 知らなければよかったと思うのは卑怯だろうか。

 結局私はその後一睡もできず、空が白みはじめる頃合いに彼のマンションを出た。心配させないようメモを残してきたが、これからどうしたらいいのか。明るくなる外の景色とは対照的に私の心はどこまでも重く黒色に淀んでいった。
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