愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「なにを言っているんだ。社外の人間に委託するのは珍しい話では」

「そういうことじゃないの! 質問に答えて。その人は社外の人間だったんでしょ? その人がメインで開発を進めていたなら著作権はどうなっているの?」

 父のあきれたような物言いについ感情的になる。父は面倒くさそうな面持ちで私から視線を逸らした。

「著作権は二次的なものを含め、すべてうちに譲渡する形で契約している」

「嘘! 嘘つかないで。社員でもない人が、そんな条件を飲むと思えない。なにかしら口頭で上手い具合に説明し、契約書に細工を……」

 具体的に言葉にしそうになり口をつぐむ。私も少しだけ知識があるからわかる。父の言い分には違和感があった。

 しばらくして父は冷たく言い放った。

「だったらどうなんだ? 少なくともあの当時は他になかったシステムが話題になり、会社の業績が大きく伸びた。その金でお前は大学に進学し、不自由なく過ごしていたんだろう」

 頭を殴られたような衝撃を受ける。父の切り返しに私はなにも言えなくなった。ふらふらと立ち上がり、帰る旨を告げる。

 母のところに顔を出すこともできず、そのまま帰路についた。

 私は、なにを期待していたんだろう。

 父が紘人の件を認めたら満足した? 父に抗議したら自分は許されると思った? それこそ親子の縁を切ったら……。

 父の仕事も彼にした仕打ちも、私には関係ないとどこかで言い訳していた。でも違う。社会人になるまで父に金銭面で支えられていたのは事実だ。私が充実した大学生活を送っているとき、紘人はどんな思いをしていたんだろう。

 苦しくて、胸が痛い。次、紘人にはどんな顔をして会えばいいの?
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