愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「あの、真紘を寝かしつけてきていい? そろそろお昼寝の時間で……」

「わかった」

 そこで私は紘人をソファで座って待ってもらうよう指示する。この調子なら真紘はすぐに寝るだろう。けれど、やはり慣れない紘人がそばにいたら落ち着かないかもしれない。

 隣の部屋にさっさと移動し、カーテンを閉めて暗くする。リビングのすぐ横の洋室が私と真紘の寝室だ。元々私の部屋で、学生時代の思い出もたくさん詰まっている。やや手狭な感じはするが、不便さは感じていない。

 おっぱいを吸いながらうとうとする真紘は本当に可愛い。色素が薄くて柔らかい髪質は改めて見ると紘人譲りかもしれない。目元は私によく似ているって言われるけれど。

 真紘はやっぱり紘人の子どもなんだ。彼に久々に会って実感する。

 複雑な思いで真紘を抱きかかえていたら、しばらくして彼は夢の中に旅立った。呼吸が規則正しくなったのを確認し、そっとベビー布団の上に寝かせる。お気に入りのぬいぐるみをそばに置いておくのは、目が覚めたときのためだ。

 寝顔に癒されながら、ついでにワンピースから授乳機能付きの私服に着替える。ゆったりとしたドッキングワンピースは産前も着ていたものだ。

 一度深呼吸をしてから私はリビングのドアを開けた。

「お待たせ」

 極力なんでもないかのように声をかけると、タブレットに目を通していた紘人の視線がこちらを向いた。

「寝たのか?」

「うん。たいていの音なら起きないからそこまで気を使わなくて大丈夫だよ」
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