愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「違うのか?」

 それらを口にすべきか迷っていたら逆に彼から尋ねられる。一瞬言葉に詰まり、私はかぶりを振った。

「紘人との……子ども、です」

 まるで罪の告白だ。そうなると続く言葉は決まっている。

「ごめんなさい。私」

「謝らなくていい。愛理が謝る必要なんてどこにもないんだ」

 強く言いきり、改めて紘人は私の肩に手を添えた。

「名前は?」

 穏やかに聞かれ、真紘の顔を一度見る。

「真紘。真実の真に紘人の紘で真紘。十ヶ月になるの」

 名前を告げると紘人は少しだけ驚いた顔になり、続けて切なそうに顔を歪めた。

「俺の名前からつけてくれたんだな」

 そこを指摘されたら、真紘が紘人の子どもではないなど言い逃れできない。私はぎこちなく頷く。

「う、ん。性別がわかる前から名前は真紘にしようって決めていたの」

 妊娠を知らせないのに勝手な真似をしたかと肩を縮める。すると頭に手のひらの感触があった。

「ありがとう、愛理」

 責められるならまだしも、お礼を言われることはなにもしていないはずだ。ところが紘人は続けて腰を屈め、私の腕の中にいる真紘に視線を合わす。

「初めまして、真紘」

 泣くかと危惧したが、真紘はじっと紘人を見つめたあと、私にもたれかかってきた。おそらく眠たさもあるのだろう。それでも彼から目線を逸らさない。

 トントンと背中をたたき、続けて私は紘人のほうを向いた。
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