愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「そ、それにしても子どもの成長ってあっという間で……。この前首が据わって寝返りできるようになったと思ったら、つかまり立ちするようになっちゃって」

 わざとらしく話題を変えたら、紘人も納得したように頷く。

「もう歩けそうだしな」

「初めてつかまり立ちしたのを見たときは、すごく感動してびっくりしたのに、今は当たり前なんだもん」

「そうか」

 そこで自分の発言を後悔する。紘人は今までの真紘の成長を見られないんだ。

 しばし考えを巡らせ、真紘の足の裏をなにげなく触わる。温かいので、眠いのかもしれない。

「あのね、今までの真紘の写真とか動画があるから、よかったら見る?」

 紘人に切り出し、私は自分のスマホを手に取った。続けてアルバムのアプリを立ち上げ彼に手渡す。

「私、その間に真紘を寝かしつけてきてもいいかな?」

 ためらう彼に補足すると、紘人はぎこちなく私からスマホを受け取った。

「ああ」

「あ、でも帰るならまた今度の機会でも」

 一方的に話を進めていたが、紘人の都合を考えていなかったと思い直す。用事がなくても、疲れている彼を不必要に引き留めるのはよくない。

「待っているよ。真紘、おやすみ」

 ところが目が合うと紘人は真紘の頭を撫で、次にさりげなく私に口づけた。

「愛理もありがとう。いつもお疲れさま」

 不意打ちに目を見張り、くるりと彼に背を向ける。

「好きに過ごしていてね。おやすみ」

 真紘を連れて自室へ向かい、明かりを落とす。
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