愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「うん。けれどその状況を作ったのは他の誰でもない俺自身だ」

 切なそうな表情に、胸が締めつけられる。

「違、う。紘人は……悪くない」

 小さく否定して、この繰り返しになるのもどうかと思い、言うのをためらっていた内容を思い切って口にする。

「あのね……」

 言い始めた私に紘人は聞く姿勢をとった。そこまでされると逆に話しづらいが、言いかけたのだから伝えないと。

「私が崎本さんと結婚しようと思ったのは、もう打算的にしか結婚できないと思ったからなの」

 真紘を一番優先するのは当然だ。私の気持ちは後回しでかまわない。でもそれ以前に……。

「紘人以上に誰かを好きになるのは、もう無理だなって」

 彼より好きになれる人が現れる気がしなかった。別れてからも、ずっと忘れられなくて苦しかった。黙って離れる選択をしたのは私自身なのに。

 都合のいい話をしている。傷つけた彼に伝える資格なんてない。ふとそこで思考が別の角度に移った。

「そ、そもそも紘人は? お付き合いしている人とか」

 慌てて問いかける。今更かもしれないが、もしもそういう相手がいたのなら、私や真紘の存在は大問題なのでは? でも昨日の感じから今はいない?

 とはいえ私と別れてから、誰かと付き合ったりしていたのなら、さっきの私の発言はますます彼に責任を感じさせてしまうだけだ。

 混乱しつつ自己嫌悪で胸が痛くなる。なんでこう、私は自分のことばかりなの。
< 48 / 123 >

この作品をシェア

pagetop