愛されてはいけないのに、冷徹社長の溺愛で秘密のベビーごと娶られました
「あと、KMシステムズで柏木社長の後任になったのは、復讐のためというより今までのやり方を変えたいからなんだ」

「でも、やっぱり父の行いを不問にするのは間違っているよ」

 父だけの責任じゃない。会社の名誉にも関わってくる。ましてや紘人だけではなく江藤さんや、他にも父の会社のせいで不当な扱いを受けた人がいるのだとしたら……。

「わかっている。俺もずっと柏木社長を恨んでいた。このやり方は社長の指示で、彼がすべて悪いんだって」

 紘人の言い方はなにかを含んでいる気がして、どこか引っかかった。

「……違うの?」

 尋ねると紘人は柔らかい笑顔を向けてくる。

「江藤さんに、柏木社長を糾弾するのをやめると伝えたのは事実だ。あとは退院して愛理が元気になったら話すよ」

「そ、そんな」

 ずいぶんと中途半端なところでお預けになってしまった。ここまできたら話してほしい。ところが、そのとき部屋にノック音が響いた。

「愛理、大丈夫なの?」

「まー」

 病室にやって来たのは母と真紘で、真紘の変わらない姿を見て涙が出そうになる。

「真紘!!」

 私に向かって手を伸ばす真紘を母がベッドまで近づいてきて抱っこさせてくれた。変わらない温もりと重たさにぎゅっと彼を抱きしめる。

「怖い思いをさせてごめんね」

「たー。あっ」

 気にするなと励ますような真紘の笑顔に、また泣きそうだ。なにもなくて本当によかった。

 母の話では車を運転していた人から謝罪もあり、相手の保険会社とのやりとりなどをしてくれていたそうだ。母にも心配をかけた。仕事だったかもしれないのに。

 母と紘人が今後について話すのを、真紘を抱っこしながら眺める。私、ひとりじゃないんだ。頼れる存在が私にはいる。迷惑をかけて申し訳ないと思う気持ちの一方で、心強くも感じた。
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