恋人たちの疵夏ーキヅナツー

宝石のような時間/その１１
ケイコ


今日は正直に言った…、ありのままを

アキラが部屋に迎えに来てくれた時に

気分すぐれないって、たぶん、アレの副作用もかなって

”あの海岸”に着いたら、もうハアハアだった

アキラは、私らを見てたテトラポット、ここだよって指さした

で、座れって

気を使ってくれんの嬉しいんだけど、ケツいてーわ、石だし（笑）

...

アキラ曰く…

あの夜、ここに座ってたら、私らがだんだん近づいてきたんだそうだ

私ら近寄ってないし、自分も動かないのにらしい

ここに座って、”さあ声をかけるぞ、今から”、と思ったらそうなったと…

ステージん時も一緒だって

客席が迫ってくるそうだ、ズンズンと…

今、これからだ、さあ、いよいよだって時には必ずこんなとか…

緊張感ってやつだよね、やっぱり…

私らナンパするときまで、そんなになっちゃって、もう…（苦笑）

でも、そんなもんだよね、一歩踏み出そうって時は


...


私ら、一緒に考えて、それでいろいろと相談した

今現在、目の前のことも、これから先のことも

やはり当面は、麻衣の行動次第だということになった

アイツ、会長との約束、結論としては守ると思う

でも、学校卒業までにクスリやめるって、それだけじゃない

たぶんだけど、”何か”をぶっ壊すとかってことだと

要は、破壊なんだと…

漠然だけど、なんか間違いない感じがする

だからアイツ…、何かやらかす気だ

それは相和会も巻き込むことだと思う

ゴメン、アキラ

このくらいししか考えが及ばなくて…


...


今日の遠出、アキラはどっか違うとこでもって思ってたよね

でもさ、今の私、ここしか浮かばなかった

たった数週間前なのに、ここでのあの夜、遠い彼方みたいなんだよ

風が強くて花火つかなくて、そんな私らに、火を灯してくれた

蚊取り線香を持ったあなたが…

そのあと、夜のドライブであなた、率先して車の荷台にね…

私もなんとなくって、あなたと一緒に寝そべって、お話しして

それが始まりで、相馬さんの葬儀の後、マッドハウスでギター弾いてるあなた見つけた

絶対、声かけなきゃって思って、アレの近いあなたをトイレで待ち伏せしてた

そのあと、展望公園行って、雨宿りになって…

その時、私みたいな年下にも、ありのままの自分さらけ出してくれてさ

びっくりしたし、カルチャーショックだったよ

で…、私も、心の奥底までさらけ出してみようって、勇気湧いてさ

火の玉川原も来てもらって、そして…、あの告白の夜はアパートでね

偶然は運命を連れてきてくれるんだなって、思ったりもした…

でも、それ、捕まえられるかどうかは、当事者しだいだって気もする

それって結構、さりげないことだったりするんじゃないかな


...


太陽の下で、焦がれてこよう…

しんどい目の前の一歩、踏みだすきっかけにしよう…

私ら、お互いそんな気持ちで千葉の海に来たんだよね

そんな私ら二人が出会うことが出来た、この海岸

あの夜、１３人がこの海岸で出会って、ひと時戯れた

そのうち１１人はあさって、豊島園に行くそうだ

そして、残りの二人である私たちは、その日、それぞれのしんどい一歩を踏み出すんだよね

アキラ…